2020-01-01から1年間の記事一覧
オーディオブック 本文 これは、いまから、四年まえの話である。私が伊豆の三島の知り合いのうちの二階で 一夏を暮し、ロマネスクという小説を書いていたころの話である。或る夜、酔いながら 自転車に乗りまちを走って、怪我(けが)をした。右足のくるぶし…
オーディオブック 本文 納豆の拵え方 お茶潰けのやり方 納豆のよしあし オーディオブック 本文 納豆の茶漬けは意想外に美味いものである。しかも、ほとんど人の知らないところである。食通間といえども、これを知る人は意外に少ない。と言って、私の発明した…
オーディオブック 本文 春のあたたかい日のこと、わたし舟(ぶね)にふたりの小さな子どもをつれた女の旅人(たびびと)がのり ました。 舟(ふね)が出ようとすると、 「おオい、ちょっとまってくれ。」 と、どての向こうから手をふりながら、さむらいがひ…
オーディオブック 本文 イツピキノ デンデンムシガ アリマシタ。 アル ヒ ソノ デンデンムシハ タイヘンナ コトニ キガ ツキマシタ。 「ワタシハ イママデ ウツカリシテ ヰタケレド、ワタシノ セナカノ カラノ ナ カニハ カナシミガ イツパイ ツマツテ ヰル…
オーディオブック 本文 初茸、松茸、椎茸、木くらげ、白茸、鴈(がん)茸、ぬめり茸、霜降り茸、獅子茸、鼠茸、皮 剥ぎ茸、米松露、麦松露なぞいうきのこ連中がある夜集まって、談話会を始めました。 一番初めに、初茸が立ち上って挨拶をしました。 「皆さん…
オーディオブック 本文 山から里の方へ遊びにいった猿(さる)が一本の赤い蝋燭(ろうそく)を拾いました。赤い蝋燭は沢山(たくさん)ある ものではありません。それで猿は赤い蝋燭を花火だと思い込んでしまいました。 猿は拾った赤い蝋燭を大事に山へ持っ…
オーディオブック 本文 オーディオブック 本文 むかし、むかし、ある家(いえ)のお倉(くら)の中に、お米(こめ)を持(も)って、麦(むぎ)を持(も)って、粟(あわ)を持(も)って、豆(まめ) を持(も)って、たいそうゆたかに暮(く)らしているお…
オーディオブック 本文 オーディオブック 本文 患者は手術の麻酔から醒(さ)めて私の顔を見た。 右手に厚ぼったく繃帯(ほうたい)が巻いてあったが、手首を切断されていることは、少しも知ら ない。 彼は名のあるピアニストだから、右手首がなくなったこと…
オーディオブック 本文 オーディオブック 本文 オンドリがメンドリにいいました。 「もうクルミがうれる時期(じき)になったよ。どうだい、いっしょに山へいって、思いきり食 べてこようじゃないか。まごまごしていると、リスのやつにみんなもっていかれち…
オーディオブック 本文 オーディオブック 本文 むかし、むかし、小さい女の子がありました。この子には、おとうさんもおかあさん もありませんでした。たいへんびんぼうでしたから、しまいには、もう住むにもへやは ないし、もうねるにも寝床(ねどこ)がな…
オーディオブック 本文 宴会 オーディオブック 本文 「俺の趣味って、かなり厄介な趣味って言われんだけど、聞いてくれる?」 会社の飲み会が始まり1時間半ぐらいだろうか、新入社員の自分は周りの先輩達に迷惑 をかけないように、大学生の時のようにガブガ…
靴屋さん あるところに、くつ屋さんがおりました。 自分がわるいことをしたわけでもないのにとにかくお金がなくて、一足のくつを作るだけの皮しかもう残っていません。 ある夜、あくる朝に仕立てようと皮を裁ち切っておきました。 心根のよい人でしたから、…
赤ずきんちゃん むかし、むかし、あるところに、ちいちゃいかわいい女の子がありました。それはたれ だって、ちょいとみただけで、かわいくなるこの子でしたが、でも、たれよりもかれよ りも、この子のおばあさんほど、この子をかわいがっているものはなく、…
サイコロ プロローグ ポイント ネタバレ プロローグ 「私、幸せになりたいんです!」 街の大通りから少し入った、路地に小さなテーブルと2つのパイプ椅子、そして簡素な 持ち運べる看板がある。 看板には”占い”とだけ書いてあり、40代ぐらいの占い師と20代前…
梨 小さな谷川の底を写した二枚の青い幻燈(げんとう)です。 一、五月 二疋(ひき)の蟹(かに)の子供らが青じろい水の底で話していました。 『クラムボンはわらったよ。』 『クラムボンはかぷかぷわらったよ。』 『クラムボンは跳(は)ねてわらったよ。…
魔王? プロローグ: 「魔王よ、降参してくれ。これ以上戦う意味などない!」魔王は立ち上がりながら、その勇者の言葉に呆れ、嘲笑うかのように返答する。「馬鹿を言うな勇者よ。我とお前は戦う運命、ここで終わるなど許される訳なかろう。どちらかが死ぬま…
おにぎり お握りには、いろいろな思い出がある。 北陸の片田舎で育った私たちは、中学へ行くまで、洋服を着た小学生というものは、誰(だれ)も見たことがなかった。紺絣(こんがすり)の筒っぽに、ちびた下駄。雨の降る日は、藺草(いぐさ)でつくったみの…
僕は或初夏の午後、谷崎氏と神田をひやかしに出かけた。谷崎氏はその日も黒背広に赤い襟飾りを結んでゐた。僕はこの壮大なる襟飾りに、象徴せられたるロマンティシズムを感じた。尤もこれは僕ばかりではない。往来の人も男女を問はず、僕と同じ印象を受けた…
あかいめだまの さそりひろげた鷲の つばさあをいめだまの 小いぬ、ひかりのへびの とぐろ。 オリオンは高く うたひつゆとしもとを おとす、アンドロメダの くもはさかなのくちの かたち。 大ぐまのあしを きたに五つのばしたところ。小熊のひたいの うへは…
桜の樹の下には屍体が埋まっている! これは信じていいことなんだよ。何故って、桜の花があんなにも見事に咲くなんて信じられないことじゃないか。俺はあの美しさが信じられないので、この二三日不安だった。しかしいま、やっとわかるときが来た。桜の樹の下…
雨ニモマケズ 風ニモマケズ 雪ニモ夏ノ暑サニモマケヌ 丈夫ナカラダヲモチ 慾ハナク 決シテ瞋ラズ イツモシヅカニワラッテヰル 一日ニ玄米四合ト 味噌ト少シノ野菜ヲタベ アラユルコトヲ ジブンヲカンジョウニ入レズニ ヨクミキキシワカリ ソシテワスレズ 野…
〇あらすじ 〇設定 〇走馬灯鑑定士 〇人物紹介 〇来客予定 〇蛇足 〇あらすじ 不思議な人物がいたと、暴走車の事故から助かったその少年は言った。 最初は、記憶の混濁かと思ったが、他の助かった人間からも同じようなことを聞いた。 ある時からだ。このよう…
パンガシウス 「せんぱーい、今日も手作り弁当なんすね。おかずなに入ってるんすか?」 唐突に後ろから声を掛けられて体がビクッと強張るが、声の主がパンを食べてる後輩だということがわかると体の緊張を解く。 「急に声を掛けるなっていつも言ってるだろ?…
プロローグ 登場人物 主人公 オールスパイス カリィ ヒロイン1 コマチンヌ アキ ヒロイン2 ブレット マリアン ヒロイン3 パスタヌ ドール 仲間1 プロテ マルス 仲間2 ベジリタル フレイユ ラスボス カーボン イドレト 蛇足 プロローグ 「人は生まれなが…
あらすじ 料理を作れば毒が出来、プールで泳げば後ろに進む。なにをやっても、うまくできない。それどころか全部マイナスに……どこにでもいない系高校生、引算翔(ひきざんかける)は自分のマイナスに怯えながらくらしていた。 そんなある日、トラックの前に…